ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『DUNE』は期待以上だった!
二十歳そこそこ…
デヴィッド・リンチ監督の『DUNE』を観た時の私の年齢だ。
その後、フランク・ハーバートの翻訳本をハヤカワ文庫で、
どっぷり浸かって何度も読み返した記憶がある。
(ハヤカワの新訳は序章にすぎず、続編がまだある)」
鳴り物入りで公開されたドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『DUNE』を
(ストーリーはすでに刷り込まれている状態で)鑑賞をしてきた。
正直、飽きることなく『DUNE』の世界に入り込めた。
『DUNE』の世界ではコンピュータが忌避され、
その代わりを「メンタート」と呼ばれる、
特殊な資質を訓練と薬物によって極限まで高めた
「計算・演算人間」が務めている設定だ。
(主人公はメンタートではない)
それゆえか、ハイテクとローテクが奇妙なバランスで
融合し両立した世界が構築されている。
例えば、惑星を領地として所有する領主は
中世の封建制さながらに領主連合を束ねる皇帝に従属している…
惑星間を簡単に行き来しているのに、領主の住まいといえど
室内はそれほど明るくなく、浮遊照明が随伴してくる…
このような遠いようで近い、近いようで遠い世界が
全編を通じて圧倒的なスケール感で描かれている。
だから、鑑賞はIMAXを強くオススメしたい。
音響と映像とで、監督が思い描いた『DUNE』の中に
間違いなくあなたを引っ張り込んでくれる。
超巨大な宇宙貨物船が海中から海上へと浮上し、
さらに空中へとシームレスに浮かび上がっていく様子は
主人公ポールの故郷の星であり、海と空の星である
「惑星カラダン」の特性を如実にあらわしていた。
予算を十分に使えたこともあって、デヴィッド・リンチ監督の
『DUNE』やTV版の『DUNE』にはあった「チープ感」は
少なくとも払拭されているように感じた。
プラス、続編ありきで製作されているので
いわゆる「駆け足感」「あらすじだけ感」も
感じずにすんだ。
原作未読でどこまで楽しめるかは
ヒトそれぞれとしか言いようがない。
それでも『DUNE』の世界を知るには
十分な映画だと私には思えた。
観客を選ぶ映画かもしれないが、
予備知識なしでも観る価値はある、と思うのは私が
DUNEシリーズ:文庫本17巻を読了しているからかもしれない…
追記
2021.11.14
日本公開(10/15)から1ヶ月、そろそろ興行収入や観客動員数から
続編の製作は…とチェックしてみたら、とっくの昔に決まっていた!
発表は10/27
レジェンダリー・ピクチャーズとワーナー・ブラザースが、
『DUNE/デューン 砂の惑星』のパート2を製作することを発表した。
監督はドゥニ・ヴィルヌーヴが引き続き務める。
10月22日より本国アメリカ、イギリス、カナダなどで公開を迎えた。
76か国で上映中。アメリカをはじめ、計34の国と地域で初登場一位を獲得。
この結果を受けての続編制作が正式決定・発表の運びとなった。
Part Twoの公開予定は2023年10月。
日本ではヒットはしているが、興行収入や観客動員数は
目を見張るようなものではない。
『カタルシスがない』『盛り上がりに欠ける』という批評は
この「DUNE」の世界感を知るには仕方ないかなぁ、が正直なところ。
舞台はSFで異世界だけど、本質はそれぞれの立場で交錯する
思想や哲学で状況が二転三転していく「人間」の葛藤ドラマだからなぁ。
「DUNE」の世界を観客にわからせて尚且つ最後のカタルシスを求めると
映画興行的な失敗が待っているのはディビッド・リンチが立証済みだ。
Star Wars Part4(公開順の第1作)が2時間程度という制限で
カタルシスまで持っていけたのは「主人公巻き込まれ型」だからだ。
「DUNE」の主人公ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)は
一種の超人ではあるが「完璧超人」ではなく、もっと人間臭いし間違いもする。
サンドワームも、クイサッツハデラッハも、メランジも、
まさにスパイスでしかない。
長大な「DUNE」の物語の第一部を、
この前後作もしくは三部作で映画化するなら、
Part Oneとしては良い映像・内容だと感じたことに変わりはない。
Part Twoの製作が決定した以上、
「カタルシスはなくて当然、続きは2年後」の心積りで
IMAXで「DUNE」の世界を世界を観て欲しいと思う。
ちなみに、「ショーンシャンクの空に」の前半部分だけ
見せられたようだ、と表する人がいたが、流石にそれは
ちょっとではなくだいぶ言い過ぎじゃないかなぁ…